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加齢黄斑変性

加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)とは

加齢黄斑変性とは、主に加齢(ほとんどの方は50歳以上)によって、網膜の中心にある黄斑部が変性し、機能が低下する病気です。
黄斑部は、私たちの視力にもっとも深くかかわる組織です。加齢黄斑変性を放置していると、視力障害、そして最悪の場合には失明に至ります。
高齢化が進むにつれて、加齢黄斑変性は増加傾向にあります。

加齢黄斑変性の症状

主な症状、ご自宅でできるセルフチェックについてご紹介します。

主な症状

  • 物が歪んで見える
  • 視界がぼやけて見える
  • 見ようとする部分が暗い、欠けている
  • 色の判別が難しくなった(色覚異常)
主な症状

上記のような症状に気づいた時には、お早めに当院にご相談ください。ただし、片目の視力低下や物のゆがみ、視野障害は、反対側の目で補われてしまうことから、普通に生活している中では気づけないケースが少なくありません。
定期的に以下のセルフチェックをし、初期症状を見逃さないようにしましょう。

初期症状のセルフチェック

初期症状のセルフチェック

眼科でも行われる「アムスラー検査」です。格子状の図、「アムスラーチャート」を使用します。
手で片目を隠し、以下の手順でチェックを行ってください。眼鏡やコンタクトレンズは装用したまま行います。

  1. アムスラーチャートから、目を30cm離す
  2. チャートの中心にある黒い点を見つめ、見え方の異常の有無を確認する
    (異常=格子が波打って見えないか、中心付近が暗くないか、など)
  3. 反対側の目でも、同じことをする

加齢黄斑変性の人の見え方

アムスラー検査の結果、格子柄が歪んで見える、波打って見える、見えないところがある(暗くなっている)といった場合には、加齢黄斑変性や緑内障など、眼科疾患が疑われます。

加齢黄斑変性の種類

加齢黄斑変性は、以下のように分類されます。

萎縮型(いしゅくがた)

黄斑部が徐々に萎縮し、視機能が低下していくタイプです。
現時点では有効な治療法が確立されていません。しかしアジア人には少ないタイプであり、日本人の加齢黄斑変性のうち約10%に留まります。

滲出型(しんしゅつがた)

日本人の加齢黄斑変性のうち、約90%を占めるのが滲出型です。
網膜よりも深層にある脈絡膜から新生血管(もろく破れやすい異常な血管)が発生し、網膜下へと増殖・拡大していきます。そして新生血管が破れるなどして、物が歪んで見える、視力が低下するといった症状が引き起こされます。
また滲出型は、さらに以下のように分類されます。

典型加齢黄斑変性(typical AMD)

脈絡膜で発生した新生血管が、増殖しながら網膜下に広がり、その新生血管からの漏出や出血、繊維血管膜の形成を招きます。

ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)

特異的な脈絡膜の新生血管、ポリープ状病巣が認められます。滲出型の中でも、特に日本人に多いタイプです。

網膜血管腫状増殖(RAP)

新生血管が網膜内や網膜下に増殖・拡大し、網膜の出血やむくみをきたします。滲出型の中では頻度は高くありませんが、多くを高齢(80歳以上)女性が占めるという特徴があります。
また、治療が遅れると急激な視力低下を招きます。

パキコロイド関連疾患

以前は滲出型に分類されていたものの、2013年頃から別の病気として定義されるようになりました。

パキコロイド色素上皮症(PPE)

網膜色素上皮細胞層で異常が認められますが、脈絡膜に新生血管が形成されることはありません。

中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)

弱体化した網膜色素上皮細胞を通じ、網膜下への水分の漏出・貯留が認められます。治療では、循環改善剤の内服、レーザー光凝固術などを行います。

パキコロイド新生血管(PNV)

パキコロイド色素上皮症(PPE)が進行し、脈絡膜新生血管が認められる状態です。滲出型の加齢黄斑変性とよく似た病態を示します。

パキコロイドを伴ったポリープ状脈絡膜血管症(PCV)

パキコロイド新生血管(PNV)にポリープ状病巣を伴った状態です。
滲出型のポリープ状脈絡膜血管症(PCV)の多くが、パキコロイドを伴っていることもわかりました。

加齢黄斑変性の原因

加齢黄斑変性の原因

加齢黄斑変性は、その病名の通り主に加齢を原因として発症します。50歳以上の約1.3%に、加齢黄斑変性の症状があると言われています。
ただ、それ以外にも遺伝、目の酷使、喫煙、紫外線、食生活の乱れなど、さまざまな因子が発症に影響していると言われています。
特に近年はスマホやパソコン、携帯ゲームなどによって目を酷使する若者・子どもが多く、偏食が続くと、こういう人たちが中高年になった時、加齢黄斑変性などを発症するリスクは高くなると思われます。

診断と治療方法

加齢黄斑変性は、先述の通りさまざまなタイプに分けられます。また以前まで加齢黄斑変性に含まれていた一部の病態が、現在はパキコロイド関連疾患として分類されるようになっています。
そのため、正確に診断し、適切な治療を行うことがとても大切になります。

抗VEGF療法

新生血管の活動を抑制する抗VEGF薬を、白目部分に直接注射します。一回きりではなく、定期的に検査を行い、必要と判断する限り継続的に注射をしていく必要があります。
近年の加齢黄斑変性及び類縁疾患に対する治療の基本となっていますが、研究開発が進み、治療効果が大きく、効果の持続期間の延長が期待できる新薬が出来ています。
当院では、個々の症例に対して最適と考えられる治療薬を、患者さんとよく相談の上で決定し、使用しています。

PDT(光力学療法)

新生血管と結びついて特定の光に反応する薬剤(ビズダイン®)を点滴し、特定波長のレーザー光を加齢黄斑変性に照射する治療です。新生血管を閉塞させたり、脈絡膜のうっ血を取ることができます。
現在では単独で行う機会は減っており、抗VEGF療法ができない方や、抗VEGF療法の効果が少ない方に行います。

レーザー光凝固術

レーザーの照射により、新生血管を熱で固める治療です。
新生血管が黄斑部から離れている場合に適応となります。

黄斑下手術(黄斑下出血除去術、脈絡膜新生血管除去術)

手術によって黄斑下の出血を取り除いたり、脈絡膜新生血管を除去するという治療です。
執刀医は特殊な技術を求められますが、経験豊富な医師が実施すれば良好な結果を得られることがあります。

栄養血管凝固術

画像検査で脈絡膜新生血管を栄養する血管が見つかった場合に適応となるレーザー治療です。

ステロイド注射

炎症の抑制を期待して目にステロイドを注射します。
比較的簡単な治療ですが、効果はあまり長持ちしません。しばしば、レーザー光凝固術と併用します。

加齢黄斑変性に効く薬はないの?

抗VEGF療法(硝子体注射)は、従来の治療よりも良好な結果が得られることが多くなっています。
ただし、注射によって加齢黄斑変性が完全に治るということはありませんので、一定の間隔または間隔を空けながら抗VEGF療法を継続することで、病気の再発を抑えることが重要です。
当院でも行っている治療ですので、ご希望の方はお気軽にご相談ください。

自分でできる加齢黄斑変性の対策・進行を防ぐ方法

禁煙する

禁煙する

喫煙者は、非喫煙者よりも加齢黄斑変性を発症するリスクが高くなります。活性酸素の増加によって、体内で酸化ストレスが増加するためだと考えられています。
喫煙をしている人は、できる限り禁煙をしましょう。

食事のバランスを考える

食事のバランスを考える

ビタミンCやビタミンEなど、目の健康に良い栄養素を積極的に摂りましょう。
また、アジやサバなどの青魚に多く含まれる不飽和脂肪酸や、緑黄色野菜に多く含まれるルテインは、強力な抗酸化作用を持ち、加齢黄斑変性の予防に有効と言われています。

紫外線を避ける

紫外線を避ける

肌の紫外線対策をする人は増えてきましたが、目の紫外線対策を意識している人は、国内ではまだ少数派です。紫外線の浴び過ぎは、加齢黄斑変性だけでなく、白内障、翼状片などのリスクを高めると言われています。
サングラス、帽子、日傘などを活用し、目の紫外線対策を行いましょう。